医療人として | 糖尿病の治療について | 糖尿病についてのコラム | プロフィール
遂に改訂の時が来た!1995年の発行以来、ほとんど改訂されていなかった自己管理ノートが、四半世紀の時を経て今回大きく改訂されたのだ。1995年と言えば、私が順天堂大学医学部医学科を卒業し、医師になった年だ。当時の血糖コントロールはインスリンとスルホニル尿素薬しかなかった時代。研修医だった私は血糖値を記載する自己管理ノートが、日本糖尿病協会から発行されていることも知らず、R(速効型インスリン)とN(中間型インスリン)で患者さんの“糖のながれを”是正することに奔走していた。その頃は、血糖測定器も今の様に簡単な物はなく手間がかかっていため、患者さんに24時間蓄尿して頂いた尿糖の量を温度版に棒グラフにして記載し、血糖コントロールの指標にしていたことを今でもよく覚えている。考えてみたら、あれは一日通して食後であっても血糖値が180mg/dLを超えていないかをチェックする良い指標だったのかもしれないが、SGLT2阻害薬が出現した今となっては限定的にしか使えない。そんな思い出も呼び起こしてくれる自己管理ノートを、糖尿病連携手帳に続いて改訂する場面に立ち会うことができた。もちろん、改訂に当たったのは下野大先生もメンバーの一人である我らが“グッズ委員会”である。
今回の改訂にあたり、連携手帳同様に大きく改革することを一つの目標に掲げた。1995年の糖尿病診療と、現代の糖尿病診療は大きく違う。当時は、低血糖は良好な血糖コントロールと表裏一体だとか、インスリンを注射して体重が増えたのはインスリン作用が効いていることの証拠だなどと言われていたこともあった(笑)今とは真逆である。まず、表紙を大きく変えて、マール君を前面に押し出した。
当院のメディカルスタッフに初めてサンプルを見せた時、とても可愛くなっていると好評であった。これなら小児の糖尿病患者さんにも楽しんで使ってもらえそうだ。そして、血糖値の記載だけではない、トータルの自己管理ノートとして使用して頂くために、血圧、体重、歩数を記載する欄も設けたことは画期的であると自負している。そのため、表紙のマール君にも血糖測定、血圧測定、体重測定、ウォーキングの一人四役を演じてもらっている。自己血糖測定をしていない患者さんにも、血圧や体重や運動量をチェックするためにご利用いただきたい。そして、このノートを使うことでインスリンやGLP-1受容体作動薬を打っていない患者さんが、自費でもいいから血糖を測ってみたいというケースが増え、更なる血糖コントロールの改善に繋がることを望んでいる。
それぞれの項目の測定方法や目標値の設定については、大垣市民病院の柴田大河先生が様々な資料を参考に、ベストな方法をベストな表現で示してくれた。素晴らしいものになっていると、私は感銘を受けている。実はここで作成秘話が一つあるのでご紹介したい。9ページにマール君と担当医師が対談している絵があるので是非見て頂きたい。
会話の内容は改訂前の11ページにあった“血糖値の高い低いに、一喜一憂しない”という文言を口語頂にしているだけだが、改訂の段階で我々はマール君に身長の設定がなされていないことに気付いてしまったのだ!!初期の段階ではマールくんの方が医師よりも大きく描かれており、男性医師の身長が約170cmとするとマール君は身長2mくらいになって、可愛くないのではないかという鋭いご指摘を新小倉病院の藤本良士先生より頂いた。また、マール君の冷や汗がビビらされているようで宜しくないとか、医師の人差し指が高圧的だという御意見も企画啓発委員の先生方から頂戴し、右の様に修正された。確かに、二つ並べてみるとご指摘の通りである。アドバイスを頂いた先生方に心から感謝申し上げます。マール君は日糖協公認マスコットキャラクターだから巨人ではなく可愛いサイズであるべきだ。
最も注目して頂きたいのは、横書きにするというコロンブスの卵にも匹敵する大胆な発想だ。血糖・体重・歩数・血圧・備考という盛沢山な情報を記載するためにこのような形式をとった。目の錯覚で1マスが小さく見えるかもしれないが、以前の物と1マスの幅は同じ長さになっている。また、複写の部分を切りやすく改造したので実感して頂きたい。
糖尿病治療薬はこの25年で大きな変革を遂げた。インスリンのみならず、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬といった体重に変化をもたらす薬剤を使用中の患者さんにも、是非新しい自己管理ノートを使って頂きたい。インスリン発見100周年という記念すべき年に、歴史的な改訂に携われたことを心から嬉しく思う。また、第11話、第28話にある糖尿病連携手帳の改訂の時と同様、私は編集員長という名の単なる司会者で、中身はグッズ委員会のメンバーが考えてくれた。さらに、事務局の岩村元気さんにはいつもながら多大なるご協力を頂き、清野裕理事長をはじめとする日本糖尿病協会の先生方には、多くのご指導ご鞭撻を頂きました。心から感謝申し上げます。
<残心>糖尿病療養グッズのためのグッズ
私は月に1回、那須塩原にある国際医療福祉大学病院で外来をしています。片道3時間の長旅ですが、多くの患者さんと出会える有意義な診療になっています。先日一人の患者さんが、自己管理ノートをペイズリー柄の素敵なカバーに入れていたので“素敵なカバーですね、ご自身で作られたのですか?”と聞いてみました。するとその患者さんが“これネットショップで売ってるんですよ”と教えてくれました。教えて頂いたホームページを見てみると、糖尿病療養グッズのためのグッズが沢山!!しかもオシャレに並んでいて、とても医療用のグッズとは思えないほどです。糖尿病診療を楽しくするためのお助けグッズというグッズ委員会が掲げている大きなテーマがここに実現されています。感動して、今回の糖キングでご紹介させて頂くご許可をお店の方から頂きました。是非皆さんも一度ホームページをご覧ください。糖尿病になって良かった!と思える出会いがそこあるかも知れません。
ハンドメイドSHOP「ku」 (base.shop)
【残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)
【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
【第25話】運動療法温故知新
【第26話】糖尿病アドボカシー
【第27話】GLP-1の真の目的は何か
【第28話】糖尿病連携手帳 第4版
【第29話】残存リスクを打つべし!
【第30話】糖尿病という病名は変更するべきか
【第31話】合併症と併存症
【第32話】メディカルスタッフ
【第33話】新・自己管理ノート
【第34話】グルカゴン点鼻薬とスナッキング肥満
【第35話】SGLT2阻害薬 For what?
【第36話】血糖値と血糖変動のアキュラシー
【第37話】経口GLP-1受容体作動薬
【第38話】コロナ禍をチャンスにする糖尿病診療
【第39話】HbA1cはウソをつく、こともある
【第40話】糖尿病治療ガイド2022-2023:私のポイント
【第41話】順天堂大学医学部附属静岡病院
【第42話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム
【第43話】降圧薬のBeyond
【第44話】糖尿病治療はデュアルの時代
【第45話】兄貴に捧げるラストソング
【第46話】血糖だけにこだわらない!糖尿病治療薬の考え方・使い方
【第47話】糖尿病は治るのか?
【第48話】2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)
【第49話】医師の働き方改革
【第50話】GLP-1受容体作動薬のセレクト
【第51話】肥満症の治療薬
【第52話】Dear ケレンディア
【第53話】高齢ダイアベティスの極意~キョウイクとキョウヨウ~
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