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 甲状腺機能亢進症 (こうじょうせんきのうこうしんしょう)

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

甲状腺ホルモンは、人間だけでなくあらゆる動物が生きていくために必要不可欠なホルモンです。甲状腺機能に異常がない人は、血液中の甲状腺ホルモンが常に適切な量に調節されています。しかし、甲状腺機能に異常がある人は甲状腺ホルモンの量を適切に調整することができなくなります。血液中の甲状腺ホルモンの量が多い状態を「甲状腺機能亢進症」といいます。このような状態になる病気はいくつかあり、その代表的な病気がバセドウ病です。同じ甲状腺機能亢進症でも病気によって治療法が異なりますので、まずは専門的な検査をおこない病名を確定した上で治療を始めることが重要です。

バセドウ病とは

20代~30代の若い女性に多い病気で、国内には数万人の患者さんがいると云われています。
バセドー病、バセドー氏病、グレーブス病とも呼ばれています。全身の新陳代謝が異常に早くなることで、様々な症状があらわれます。治療せずにほうっておくと重症化するので大変危険です。治療により甲状腺ホルモンが正常値に戻ると症状はおさまります。

バセドウ病の原因

体内に甲状腺を刺激する物質(TSHレセプター抗体)ができて甲状腺を刺激し続けることによって起こる病気です。甲状腺に「ホルモンを分泌せよ」と命令する物質に「似た物質」ができて甲状腺を刺激するので、甲状腺が過剰に反応して甲状腺ホルモンを必要以上に作り分泌してしまいます。甲状腺機能亢進状態になるため、新陳代謝が異常に早くなり様々な症状があらわれます。

バセドウ病の症状

心臓がドキドキする。(動悸)
たくさん汗をかく。(多汗)
手がふるえる。
体重が減る。
目が出る。
目がギラギラする。
目つきが変わる。
疲れやすい。
イライラする。

落ち着きがない。
暑がり。
下痢。
無月経。
月経不順。
体に力が入らない。
たくさん食べても太らない。
首が腫れる。
不妊。

バセドウ病の検査

● 血液検査
● 甲状腺超音波検査
● 尿検査
● 心電図検査
● 甲状腺ヨード摂取率検査

甲状腺で甲状腺ホルモンがどの程度作られているかを測定する検査で、軽度の甲状腺機能亢進症、妊娠の可能性のある方、妊婦、授乳中の方にはおこないません。

バセドウ病の診断

● 甲状腺ホルモンが高い(FT4、FT3が高く、TSHが低い)
● TRAbが陽性である。
● 放射性ヨード摂取率が高い。
● 甲状腺の血流が増加している。

バセドウ病の治療

バセドウ病には、薬による治療、アイソトープ治療、手術の3つの治療法があります。

薬による治療

● 適した人 甲状腺の腫れが小さい人、病気の程度が軽い人、妊婦など
● メリット 薬を飲むだけで治療できるので簡単で通院しながらの治療が可能です。
● デメリット 長期間を要する治療方法で、甲状腺の腫れが大きい人や甲状腺レセプター抗体が高い人などは常に薬を飲み続けなければいけなりません。また、少数ですが非常に重い副作用が発生することもあるので、頻繁な通院が必要となります。

バセドウ病の代表的な治療薬

メルカゾール

メルカゾール

最もよく使われている抗甲状腺薬です。抗甲状腺薬とは、甲状腺ホルモンをおさえる薬で、メルカゾールはチウラジールより10倍以上甲状腺ホルモンをおさえる効果が高いといわれています。甲状腺ペルオキシダーゼという酵素の働きを妨げることによって、甲状腺ホルモンT3、T4の合成をおさえます。

● メルカゾールの服用

最初は多く服用して甲状腺機能を安定させ、その後少しずつ減らして維持療法(再発予防といった観点から低用量の薬を服用し続ける治療法)とします。成人の服用量は、初期は1日10mg~30mg(2~6錠)を1~2回に分けて服用し、機能亢進症がほぼ消失したら、2~4週毎に少しずつ減らしていき、維持量として1日5~10mg(1~2錠)を1回服用します。ただし、個人差があります。

● メルカゾールの副作用

10人に1人くらいの割合で、かゆみやじんましんなどの皮膚過敏症があらわれますが、抗ヒスタミン剤のかゆみ止めを飲むことで症状がおさまります。特に注意しなければならないのが、細菌などから体を守る働きをする白血球や顆粒球の数が減少する白血球減少症や顆粒球減少症で、のどが痛くなったり、熱が出たり、全身の倦怠感などがあらわれることがあります。1000人に2~3人の割合で起こる非常にまれな症状ですが、放っておくと悪化し大変危険な状態になりますので、これらの症状が現れたらすぐに主治医に連絡してください。また、肝機能障害、黄疸、SLE様症状(発熱、紅斑、筋肉痛、リンパ腫脹、脾腫等)、インスリン自己免疫性症候群による低血糖の報告もありますが、頻度的には低いようです。

チウラジール

チウラジール

通常、メルカゾールが第一選択薬となりますが、メルカゾールの副作用が強い場合や妊娠した場合にはチウラジールに切り替えられることがあります。チウラジールもメルカゾールと同じように、甲状腺ペルオキシダーゼという酵素の働きを妨げることによって甲状腺ホルモンT3、T4の合成をおさえますが、それに加えてT4からT3への変換も抑制し、甲状腺ホルモンをおさえます。

● チウラジールの服用

1日3~6錠から始め、少しずつ減らしていき維持量として1日1~2錠を服用します。ただし、個人差があります。

● チウラジールの副作用

10人に1人くらいの割合で、かゆみやじんましんなどの皮膚過敏症があらわれますが、抗ヒスタミン剤のかゆみ止めを飲むことで症状がおさまります。特に注意しなければならないのが、細菌などから体を守る働きをする白血球の数が減少する無顆粒球症という症状で、のどが痛くなったり、熱が出たり、全身の倦怠感などがあらわれます。1000人に2~3人の割合で起こる非常にまれな症状ですが、放っておくと悪化し大変危険な状態になりますので、これらの症状が起こったらすぐに主治医に連絡してください。また、肝機能障害、黄疸、腎炎、SLE様症状(発熱、紅斑、筋肉痛、リンパ腫脹、脾腫等)、インスリン自己免疫性症候群による低血糖の報告もありますが、頻度的には低いようです。

アイソトープ治療

● 適した人 薬で治りにくい人、薬の副作用が強い人、バセドウ病手術後に再発した人、心臓や肝臓の悪い人、早く治りたい人など
● メリット 通院治療が可能で、飲み薬に比べ短期間で治療できます。また、放射性ヨードを使用する治療ですが、癌や白血病などを誘発する心配がないことがアイソトープ治療の先進国であるアメリカで、長期間のデータ分析により実証されています。もちろん妊娠中の女性には行いませんが、若い女性にアイソトープ治療をおこなっても将来の出産において悪影響を及ぼすことはありません。
● デメリット バセドウ病に対する深い知識と特殊な設備が必要なため、アイソトープ治療を行える医療機関は限られています。甲状腺専門医がアイソトープ治療をおこなっている医療機関は、福岡県では二田哲博クリニックの他数施設のみです。また、効き方に大きな個人差があるため、将来甲状腺機能低下になる人が多いのも事実です。甲状腺機能亢進が軽度な人、妊婦や妊娠の可能性のある人もしくは授乳中の人にはおこないません。

アイソトープ治療についてさらに詳しく

手術

● 適した人 薬で治りにくい人、甲状腺の腫れが大きい人、薬の副作用が強い人、早く治りたい人など
● メリット 甲状腺が大きいなど、薬で治りにくい人でも確実に治療できる方法で短期間で治ります。甲状腺を一部残して切除する手術をおこなう病院では、8割以上の確率で手術後すべての薬を飲まなくてよくなります。
● デメリット 甲状腺のある喉元あたりに手術の傷跡が残りますが、医療機関によっては間近で見てもほとんどわからない程の傷跡にすることも可能です。入院治療が必要で、医療機関によって手術成績や手術の後遺症、術後の甲状腺機能に大きなばらつきがあるのが実状です。医療機関をよく吟味する必要があります。

甲状腺の手術が必要になった場合は、甲状腺の手術を数多くおこなっている医療機関や専門医をご紹介します。

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