糖尿病専門医・指導医 野見山崇 | 糖尿病についてのコラム

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糖キング 糖の流れに魅せられた男が語る(Talking)糖尿病のお話。 二田哲博クリニック 糖尿病専門医・指導医 野見山崇

【第24話】
血管平滑筋細胞の奥深さ

血管を構成している主な細胞は、内膜を構成する内皮細胞、中膜を構成し血管の弾力を保つ平滑筋細胞、そしてパトロールをしている単球・マクロファージである。Vascular Biology(血管生物学)を研究している多くの研究者は、内皮細胞やマクロファージを主に研究している方が多い。私の知人でも、スマートな研究者は内皮細胞を、アグレッシブな研究者はマクロファージを研究している人が多いような気がする(笑)。しかし、私はあえてマイナーな血管平滑筋細胞(VSMC)の研究を行ってきた。なぜならVSMCが非常に興味深い細胞だからだ。
VSMCの究極に面白い魅力的な点は“Phenotype Switching(形質転換)”するところだ。通常の健康な血管に存在するVSMCは大人しく仲良く手をつなぎ、血管の弾力を保って血液を臓器に提供している。この状態をContractile Phenotype と呼ぶ。ところが、糖尿病や血管傷害などの刺激が加わった瞬間、大人しかったVSMCは大魔神の様に豹変し、増殖したり内弾性板を突き破って遊走したりして、血管を硬く狭くしてしまう。この状態をSynthetic Phenotypeと呼ぶ。

豹変するVSMC

臨床の現場で、VSMCのPhenotype Switchingが寄与している病態は、慢性的な動脈硬化もそうであるが、循環器内科の先生方が行う冠形成術(PCI)の後の再狭窄病変が有名だ。種々の薬剤溶出ステントが開発され、PCI後の再狭窄は減少したが、糖尿病患者では今なお多く認められることは、糖尿病の病態とVSMCがPhenotype Switchingして増殖・遊走することが深く関わっていることを示しており、糖尿病学者こそVSMC研究をするべきだと言える。米国留学中、私はNOR1という核内オーファン受容体とVSMCの研究を行ってきた(J Biol Chem. 2006 Nov 3;281(44):33467-76, Circulation 2009 Feb 3;119(4):577-86)。NOR1は大阪大学の大倉永也先生が発見された核内受容体であり、VSMC増殖に重要な役割を担うのみならず、糖尿病の病態とも深く関わっていることも報告されている(Mol Metab 2013 Jun 17;2(3):243-55)。私が留学中に人生をかけた大好きなNOR1研究を、何か福岡大学で形にしたいと考えていたところ、大学院生の高橋弘幸君がGLP-1受容体作動薬の血管保護作用のターゲットがNOR1であることを解明し、つい最近論文化してくれた(Takahashi H, et al. J Atherscler Thromb 2018, in press)。留学中に研究していた遺伝子をトリビュート・アルバムの様に再度論文化、しかもGLP-1の血管保護作用という最近のトピックを絡めて世に出せるとは感慨深いものである。またこの時、Skp2の抑制に伴うp27の上昇が、下流のメカニズムであることも解明されたことが、更なる感動を生んだ。信念をもって、研究を継続することが重要であると確信できた。

VSMCの増殖抑制が、血管保護の一機序であることは言うまでもない。しかし、VSMCの増殖という変化が極端に抑制されると、どうなるのであろうか。市民が暴徒化しなくなるような状況を誰もが思い浮かべると思うが、実は違っている。Atg7というノーベル賞を受賞された大隅良典先生のオートファジーに重要な遺伝子をノックダウンすると、VSMCは増殖しなくなるが血管病変は悪化することが報告されている(Autophagy 2015 Nov 2;11(11):2014-2032)。つまり、VSMC増殖は病的状態ではあるが、血管保護にも一役買っているといえる。そういえば留学中に、免疫学の研究をしていた友人と動脈硬化やVSMC増殖は一種の創傷治癒機構であるという小さな総説を書いたことがある(Current Anesthesia & Critical Care 2006;17, 13-20)。悪役のふりをして、実は人のためになっている、まるでデビルマンのようなVSMCはかっこ良すぎる細胞だ。ほぼ100%善人の内皮細胞や、ほぼ100%悪人のマクロファージとは奥深さが違う。これからもVSMC研究を続ける決意を固めた。

<残心>京都大会
剣道家憧れの舞台、京都大会に参加してきました。京都大会とは正式名称“全日本剣道演武大会”といい、錬士以上の称号を有するもののみに参加が許された試合です。京都市武道センターにある武徳殿の試合場に立つと、剣道がスポーツではなく武道であり文化であることを、自分が医師である前に武士であることを痛感させられ、自ずと背筋が伸びてきます。立ち合いを神前で行うと、鏡に自らの生き様を移されているような気分になり、せこい技は出せません。神聖な心地よい感覚でした。また、偶然アメリカで剣道をしていた友人とも再開できました。Tさんは強豪デトロイトチームで活躍した剣士で、同時期の全米剣道選手権大会にも参加しています。続けるということは、懐かしい人に会える可能性を残しているとも言い換えられるかもしれません。私が剣道や研究を続けているのは、懐かしい仲間に会いたいからかもしれません。













残心(ざんしん)】日本の武道および芸道において用いられる言葉。残身や残芯と書くこともある。文字通り解釈すると、心が途切れないという意味。意識すること、とくに技を終えた後、力を緩めたりくつろいでいながらも注意を払っている状態を示す。また技と同時に終わって忘れてしまうのではなく、余韻を残すといった日本の美学や禅と関連する概念でもある。(Wikipediaより一部抜粋・転載)






【第01話】多くの人生を変えたミラクルドラック・インスリン
【第02話】HbA1cの呪縛
【第03話】糖尿病と癌
【第04話】糖毒性という名のお化け
【第05話】医者らしい服装とは?
【第06話】食後高血糖のTSUNAMI
【第07話】DMエコノミクス
【第08話】インクレチンは本当にBeyondな薬か?
【第09話】守破離(しゅ・は・り)
【第10話】EMPA-REG OUTCOMEは糖尿病診療の世界を変えるか?
【第11話】新・糖尿病連携手帳
【第12話】過小評価されている抗糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬
【第13話】ADAレポート2016
【第14話】メトホルミン伝説
【第15話】Weekly製剤を考える
【第16話】糖と脂の微妙な関係
【第17話】チアゾリジン誘導体の再考~善とするか「悪とす」か~
【第18話】糖尿病患者さんの死因アンケート調査から考える
【第19話】Class EffectかDrug Effectか
【第20話】糖尿病治療薬処方のトリセツ執筆秘話
【第21話】大規模臨床試験の影の仕事人
【第22話】低血糖の背景に、、、
【第23話】ミトコンドリア・ルネッサンス
【第24話】血管平滑筋細胞の奥深さ
・・・次回「運動療法温故知新」 2018年9月15日頃公開予定

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